待ち人、音信なし
今度は普通に笑われた。
「それは無いよ。彼、ここに来る前よりずっと柔らかくなったから」
それに返す言葉を探して、私は黙る。
所長はお茶を置いて、私の肩を静かに叩いた。
「難しく考えなくて良いんだ、イヴ」
――彼には君が必要だったって話さ。
「着いた」
「あ、はい」
ぼーっとしていた。ノアさんが先に車から出ていく。
私もシートベルトを外し、車から降りた。
鞄を持つノアさんの背中を追う。