待ち人、音信なし
高架下は昨日の雨で泥濘んでいた。慎重に進む。
「あそこまで水位上がったんですかね?」
「かもな」
土手の芝生の色が変わっている。土で茶色くなっていた。
すぐそこを流れる河川も濁っており、最近の雨量の多さが覗える。今日は晴れているからそんな心配は無さそう。
ノアさんを見る。
あれから休んではいない。次の日もけろりとした顔で来ていた。
「河に落ちるなよ」
「落ちたくは、ないです」
「一歩進むと深い」
落ちたことがあるみたいな口ぶりだ。
平らな地面ですら歩きにくい。採取するキットを持って、注意深く進んでいく。