待ち人、音信なし
話しかけられただけで、何をこんなに動揺してるのか。
私は深呼吸をして落ち着く。
検体に番号を振り、水質検査の方のキットを持った。
腕を伸ばして河川の水を採る。
キャップを締めて、手袋を外す。振り向いて足を踏み出した場所が泥濘んでいた。
転ばないようにしようと、力を入れて踏み込んだ。
そして、ずるりと後ろによろけた。
まずい。
咄嗟に反対の足を後ろにやった場所が河の中だった。ちゃんとした姿勢が取れず、もう一歩後退した。
ずぽ、と嫌な足のハマり方をして、先程のノアさんの言葉を思い出す。