待ち人、音信なし
でも、ノアさんが来る前は普通に何でもない顔をして生きていた。
車の扉が開く音がして、顔を上げる。
ノアさんが運転席に座った。
私の膝に置いてあったタオルを攫い、自分の足を拭うより先に、手に持った固い機械を包んだ。
「……見つかったんですか」
「電源入らねえけど」
画面や背面が酷く傷ついている。
私の手を一旦離れたそれが、戻ってきた。
冷たく、固い小さな機械。
それをぎゅっと抱きしめる。
そして、声を上げて泣いた。
もう戻らない彼と。
彼を好きだった気持ちを手放す痛みと。
ノアさんを好きな切ない気持ちと。