待ち人、音信なし
「か、風邪はもう良いんですか!」
「う、っせえ……」
「すみません……」
思いの外大きな声が出てしまって、ノアさんは顔を顰める。
ノアさんの持つ袋には薬が入っていた。
「まだ治ってないんですか? なんで寝てないんですか」
「いくつだと思われてるんだ、俺は」
「……私は今日一日、前の資料のデータ作業でした」
ノアさんの嫌がった資料室の整理整頓だ。
私が言うと、罰の悪い顔をしてノアさんは明後日の方向を見る。
分が悪くなると目を逸らすなんて、猫みたいだ。
「……風邪だって聞いたので、ノアさんの家を訪ねようと思って」