待ち人、音信なし




ノアさんの家のリビングにはテレビしかなかった。

渡されたタオルで髪の毛の水分を拭き取りながらぐるりと見回した。

あと、窓がある。

雨が降っていても外の光で充分明るい。
そういえば、窓がないから眠れないと言っていたっけ。

キッチンで物音がして振り向けば、シャツを着ながら冷蔵庫を開ける姿があった。

見えた背中の傷。

「傷、痛みますか?」

ノアさんはフードを被っていたので、殆ど濡れていない。こちらを見て、すぐに目を逸らした。

「普通」
「鎮痛剤、買ってましたよね」
「探偵かよ」

笑っている顔は見えない。

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