待ち人、音信なし

冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、それを飲んでいく。

「所長から、聞きました。ノアさんが戦争に行ってたこと」
「……そうか」
「あと、この前はすみませんでした。あんな風に……探させて、泣いたりして」

その言葉への返答はない。

ノアさんは静かにこちらに来て、少し身を屈めた。顔が近づく気配がして、掠めるように唇が重なる。

驚き、目を開いてその姿を見上げた。
同じように驚いた顔をしている。

「どうしてノアさんが吃驚してるんですか」
「なんで避けないんだ」
「いやいきなり!」

顔が紅くなるのを感じて、タオルを被る。

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