待ち人、音信なし
ふ、と息を吐く音。
「可愛いな、お前」
なんかはぐらかされている気がする。
色んなことを。
「お前が自分も死ねば良かったって言ったとき、俺はその男の代わりに死ねば良かったと思ってた」
タオルの隙間からノアさんを見る。
こちらを見ていない。カーテンの開いた窓の向こうを見ていた。
アイザックの代わりに。
その言葉の意味を理解して、私は右手を振り上げたけれど、ノアさんの頬につくまでに簡単に掴まった。
微動だにせず。
反対の手を、反対の頬へと伸ばす。
ひた、と冷たい頬へ触れた。