待ち人、音信なし
タオルが下に落ちる。
「つまりそういうことなんだろうな」
どこか楽しげに、諦めたようにノアさんは言った。
「……そんなこと、言わないでください。冗談でも」
「怒ってるのか?」
「怒ってます」
「戦前も戦後も同じだ。俺には待つ人間はいない。死んだ友人を待つ家族や知人たちを見て、俺が死ねば良かったと思ったし言われた」
私の指が触れて、漸く熱を持つ。
掴まれていた手が離されたので、その手を首に回すと、ノアさんは屈んでくれた。
背中を、撫でる。
この傷だけではない。
ノアさんが痛がっていたのは。