待ち人、音信なし
「最期までじゃなくても良い」
耳元で言葉が聞こえる。
「お前の死んだ男のつぎでも良い」
私は背中の手を止める。
「今だけでも、何番目でも良い」
「最期まで、一番です。急にそうやって、怯まないでください」
「……そうか」
腕を解こうともしないくせに。
そう思っていれば、ノアさんは一瞬離れて、私の脇腹を掴んだ。ぐら、と体幹のない上半身が揺れて、ノアさんに掴まった。
「こ、怖いです!」
「屈むのが辛い」
キッチンカウンターに乗せられ、ノアさんを見下ろす形になった。
菫色の瞳がこちらを見上げている。