待ち人、音信なし
逡巡し、それから口を開いた。
「今は、まだ。これから道が整備されたりして、行きやすくなったら」
死んだ男のことを探したいのだろうと思っていた。
「ノアさんと一緒に行きたいです」
「……は?」
「嫌じゃなければ。いや、戦時のこと思い出すから普通嫌ですよね」
「俺は別に構わない」
「本当ですか? じゃあいつか、行きましょう」
途端に嬉しそうな顔をする。
「一緒で良いのか」
「一緒が、良いんです」
俺に毛布を掛けた女が、はにかむ。
「可愛いなお前」
「……ノアさん、可愛いしか語彙ないんですか?」
本当に、可愛い。
待ち人、音信なし
(しかし、必ず来る) END.
20210410