【短】春、二人だけの思い出を
保健室の君
「失礼します」
ノックを3回してドアを開ける。
鼻にツンとくる消毒液の香り。
「3年2組の三井小春です。外山くんにプリントを届けに来ました」
保健室内をぐるっと見回すけど、保健の先生の姿は見当たらない。
今日は水曜日だから、きっと会議があるのだろう。
ガラッと音を立てて扉を閉めてからもう一度視線をあげると、ベッドの仕切りのカーテンの隙間から手招きする彼が見える。
私は早足で駆け寄った。
「こんにちは」
「こんにちは」
私が笑いかけると、彼は同じように優しい笑顔を返してくれる。
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