【短】春、二人だけの思い出を
危険な香りを感じつつも引き寄せられてしまう。
私よりも温度の低い手が頬に触れる。
火照る顔に心地よい。
そっと近づいてお互いの距離がゼロになった。
あの日から、たまにこうやってキスをされて、必ず最後に「2人だけの秘密だよ」って囁くの。
けど、1度も「好き」とか「付き合って」とかいう類いの言葉を言われたことはない。
外山くんはどういうつもりでこういうことをしてくるの?
意図が読めないよ。
だんだんと頭がぼっとしてくる。
こうやっていつも流されてる私も私。
最初に会った時、外山くんは私に「寂しいんだよ」って言った。
じゃあ、その寂しさをこうやって都合のいい女で埋めてるだけ?
私は、本気で思ってるよ…。
外山くんの世界にもっと深く近づきたいって。
外山くんの中で私の存在が大きくなっていたらいいなって。