【短】春、二人だけの思い出を
私たちの時間は、こうやってぎこちない挨拶を交わすことから始まる。
「はい、これ今日の課題プリント。で、こっちは進路希望調査書」
クリアファイルに入れて持ってきた2枚のプリントを手渡すと、外山くん―外山淳希くんは「いつもありがとう」と言ってそれを受け取る。
これで学級委員長の私の仕事は終わり。
なんだけど。
私はそのまま外山くんのベッドの隣に腰掛けた。
「外山くん、今日は何してたの?」
「今日はね、数学と理科やってた。あと、この本読み終わったよ。ありがとう」
3日前くらいに私が貸した本だ。
「早かったね」
「面白くてすぐ読んじゃった」
私たちは目が合ってにこりと笑い合う。