【短】春、二人だけの思い出を
外山淳希くん。
きっと名前は学年中の生徒が知ってる。
でも、彼の顔を知っている人はほとんどいないだろうと思う。
私も今年になるまで姿を見たことも、こうして会話をしたこともなかった。
知っていたことといえば、頭がいい人なんだろうなってこと。
テストの順位が貼り出されたときに必ず1位に書かれている彼の名前。
1年の時からずっと保健室登校だった外山くんとこうして話すようになったのは、3年生になる時のクラス替えで同じクラスになったことがきっかけだった。
学級委員長になった私は担任の先生に保健室にプリントを届けに行く役目を任せられた。
最初は本人に会うことはなくて、保健の先生にプリントや連絡事項を伝えて帰るだけだった。