【短】春、二人だけの思い出を
「ありがとう」
「じゃあ私はこれで」
プリントを渡してさっさと帰った方がいいかなと一歩下がったところで、「待って」と声を掛けられる。
「ん?なに?」
「もし、時間があったらさ、僕の話し相手になってくれない?」
「え、」
突然のことに驚いていると、優しく背中を押されてカーテンの中へ誘導される。
保健室には私と外山くんの2人きり。
しかも外山くんがカーテンを閉めるから、私はますます意識して不覚にもドキドキしてしまう。
「僕ね、寂しいんだよ」
外山くんの横のベッドに座って顔を見上げると、思ったより顔と顔の距離が近くて、私は自分の鼓動がさらにはやくなったのを感じた。