【短】春、二人だけの思い出を
整ったその顔にバランスよく配置された大きな瞳に吸い込まれそうになる。
綺麗だ、と思った。
その瞳の中には確かに私が映っていて、でもそれでいて透き通って何も映していないような、
そんな不思議な――
じっとどのくらいの時間、彼に見惚れていたのかわからない。
ふと唇に何かがあたる感触にはっとする。
外山くんの細くて長い指がそっと私の唇に添えられていた。
ひんやりとした指先があたる感覚に背中がヒヤッとした。
「外山くん、どうした、の…?」
やっとのことで声を出す。
「うん?いや、綺麗だなって」
その指がそのまま私の下唇をすっとなぞる。
「ひゃっ」