皎天よりあの子は遥か
鮮やかなまま
1か月半ぶりに学校へ行くと隣の席にいたはずの女の子が退学していた。
確かにその前から風邪だと言って休んでいたけど、まさか学校をやめていたなんて。
その理由は聞く相手もいないみよでさえすぐに知ったほど学校中のうわさになっていて、くだらないなとぼんやり思う。まあみよには関係のないことだからどうでもいいけど。
「天野さん久しぶりだね。課題できてるなら提出しに来いって村上先生が言ってたよ」
みよが学校に来たこと以上のうわさ話のおかげでいつもより静かに過ごせていたのに、この女...と見上げると模範的な笑顔が落っこちてきた。
相変わらず気色わるいな、この優等生。なんで他のひとたちみたいにこわがらないで話しかけてくるんだよ。
教室中の視線が一斉にこっちに向く。こそこそとした話し声は、この優等生かつ人気者の身を案じてる。さすがにみよだって話しかけられただけで手上げたりしないし。
「あー…わかった。どうも」
そうつぶやいて、かばんから課題を取って席を立つ。
はやくこの場から立ち去りたい。なんであんな注目されなきゃならないの。この女が話しかけてきたのが悪い。いつもそう。こわがってもらったほうがマシ。
だいたい馴れ馴れしいんだよ。貼り付けたような笑顔もご丁寧な言葉もうざったい。
そう頭の中で毒づきながら教室を出ると、なぜかそいつも付いてきた。
「いや、なんで来るの」
「私も村上先生に用事があって」
だからって一緒に行くことないでしょ。隣歩くことないでしょ。今度は廊下をすれ違うひとたちからの視線が突き刺さる。
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