皎天よりあの子は遥か


自分のことが、ひどくかっこわるく思えた。


本当に死にたかった。そうすれば今よりラクになれると思っていたからだ。理由だってちゃんとあると正当化し ていた。仕方のないことだと、誰にも言えない言い訳を頭に並べて、だけどそれを声にする勇気はなくて。はずかしい。

いま隣にいるふたりは、みよと同い年なのに。



「わたしね、言えなかったけど、天野さんのことかっこいいなあって思ってた。周りの目も気にせず自由な感じで……わたしにはできないこと、いっぱいできてるひとだって。今日子のこともそう。勉強ができてみんなに好かれてていつも笑顔でかっこいいなあって。…いつも誰かのことうらやましいって思ってたの。だけど今は、わたしっていちばん幸せかもしれないなあって思うんだ」


そう言った彼女は、その幸せを自慢するようではなく、ただただみよたちに報告してくれているだけだってわかった。


これからあかちゃん…優生ちゃん?くん?わからないけど、その子が入院している病院へ行くんだって。

体調も良好で明後日には退院らしい。蒼井さんは「よかった」と心の底から安心したような声でつぶやいていた。



手を振られて、手は振り返せずに別れた。

駅ももう近い。やっとひとりになれる。


「ねえ、美宵ちゃん」

「…なに」


もうすっかりその呼びかたが定着してる。でももうどうでもいいや。

もっと大事なことが、あるはずだ。


「私思うの。つらいこともあるかもしれないし、楽しいことと思うことはないかもしれない。だけど美宵ちゃんは死ぬ必要ないって」

「…勝手なこと言うね」


うらやましいとは思わない。でももっとひどいことは思ってしまった。

死ぬかもしれないひとはお気楽でいいよね。 何も知らないくせに。死ぬ必要はないって言うけど、生きる必要だってないんだよ。

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