皎天よりあの子は遥か
「天野さん、死んじゃいたいの?」
答えてくれない代わりに曇りのない問いかけをぶつけられた。あまりに直球だったからこっちが身じろぎしそうになる。
台詞的にもう少し遠慮してくれても良いんじゃないかな。これじゃ逃げ場がない。
「…生きてても、楽しいことなんてないから」
あるのは、面倒になるほどの苦い痛みだけ。
未成年での酒と煙草。盗んだものを平気で自分のものにしたり、違法の薬を手放せないやつらとの交流。嘘をついて引っ掻き回した人と人との間の絆。馬鹿にしてきた人間。お金をもらってするセックス。心の中でバカにするだけのセックス。時には血が出るほどの暴力を受け、代わりに他の人間を使ってもっと大きな暴力を与える。
誰かに恨まれ、騙して、騙されて、やり返されて、 やり返して、終わらない連鎖。
抜け出せない汚れに身を沈めることでラクを覚えた。何度も補導された。悪いことに手を染めた。
それでも恵まれていると自覚できるくらいの容姿と親の権力に目をくらませた人たちのせいで罰せられたことはない。
誰もみよのことなんて見ない。悪いことをしてるのに。誰かを使って発散しているのに。子供じみたことをしてるって自分でもわかっている。だけどやってることは子供なんかじゃないのに、どうして。
こんなどうしようもない世界、なくなればいいのに。 そんなことを思ったって滅びちゃくれないから、みよが消えるしかないでしょ。
だから課題を提出しに来た。
だから今までのことを片付けて、縁を切った。