皎天よりあの子は遥か


学校に来れば元気で明るく人に頼られて好かれている、悩みなんて何もなさそうな女の子が、なんなの、突然。


「気を遣わせるつもりはなかったの、本当だよ」

「いや…遣うでしょ」

「そっかあ。でもこれが私のふつうだから、気にしないで」


蒼井今日子のふつう、は、みよにとってのふつうではない。幼いころから病気なの、なんて、クラスメイトも知らないようなこと、みよに言う意味がわからない。

薬なんて隠れて飲んでくれたらよかったのに。



「内緒にしないって言ったらどうするの」

「美宵ちゃん、言うひといないじゃない」


くすくす笑いながら失礼なことを言う。優等生って、わけわからない。


「それに美宵ちゃんは、仮に言うひとがいたって他の子たちみたいにうわさしないもん」

「…なんで」

「なんでそう思うのかね。…じゃあ、美宵ちゃんは、はるかちゃんのことをどう思う?」


さっきから突拍子もないことを聞いてくる。


「どうって、どうも思ってない。どうでもいい」

「それはうそ。どうでもいいとは思ってるだろうけど、どうも思ってないことはないでしょ、生きてる人間なんだから」


嫌味ったらしい口調にちょっとおどろいてしまった。

なんというか、いつもより丁寧じゃない。答えないならきみの負けだよって言われてるような気分になる。



花村はるか。隣の席になってから律儀にあいさつしてくる、少し小柄な女の子。同じグループのふたりが並んだ後ろに引っ付いて歩いているような控えめな性格。

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