イザベル・アルザス公爵令嬢の誤算 〜婚約破棄を狙ったら婚約者の性癖が開花した〜
必死にイザベルのせいで教師に怒られ、次に赤点を取ったら卒業できないかもしれないと言うミネットと、相槌を打ちながら話を聞いているアデルバードに対して、イザベルの内から沸々と苛立ちが生じて来る。
打合せの邪魔だと、生徒達が思っていてもアデルバードがミネットの話を聞いている以上、他の者が二人の会話を遮断できない。
口を挟めるのは、副会長であり王太子の婚約者のイザベルだけ。
机に両手をついてイザベルは椅子から立ち上がった。
「あのねミネットさん。わたくしが告げ口をするなんて、くだらないことをすると思っているのですか? 補習担当の先生は誰が来なかったか把握していて当然でしょう? もしもわたくしが動くのでしたら、徹底的に、証拠も残らずに貴女を潰しますわ。貴女の振る舞いは、無知だとしても非常に失礼で不愉快です。そして打合せの邪魔です」
怒りを滲ませた声色に、隣に座る書記の男子生徒はギョッと目を開いて身を縮めた。
「ミネットさん、話は後で担当の先生に同席してもらい聞きます。何度も言いますけど打合せの邪魔です。殿下と一緒に退室しなさい」
退室を命じたイザベルを睨み付けたミネットの顔は、怒りで徐々に真っ赤に染まり勢いよく床を踏み鳴らした。
「邪魔ですって? うるさいわね!! アンタが悪役令嬢の動きをしてくれないから! アデルバード様の攻略が上手くいかないのよ!! ちゃんと役目を果たしなさいよ!!」
叫び声と共に身を翻したミネットは、目にも留まらない速さでイザベルへ掴みかかった。
「ミネット!?」
ダンッ!
「ぐきゃあ!?」
制止の言葉をアデルバードが言い終わる前に、イザベルへ掴みかかったミネットの体は後方へ吹っ飛び壁に激突する。
襲い掛かったミネットの手首を掴んだイザベルが、勢いを利用して壁へ向けて投げ飛ばしたのだ。
静まり返る室内に、白目を剥いて気絶したミネットの呻き声だけが大きく聞こえた。
「殿下……恋人はちゃんと躾をしておいてください」
今まで聞いたことが無い、底冷えするような声と氷のように冷たい眼差しをイザベルから向けられたアデルバードは、ビクリと体を揺らした。
「イザベル、落ち着け」
「……落ち着け? 殿下の婚約者というだけで妙な噂を流され、失礼な方から悪役令嬢と言われたのに? わたくしが好き好んで殿下の婚約者になったとお思いですか? わたくしの意思ではありませんし、貴方と結婚なんて冗談じゃない。すぐにでも解消したいと思っています。ええ今すぐに解消しましょう。其処で伸びているミネットさんと婚約して、二人でお幸せになってくださいませ」
「イザベル」
手を伸ばそうとしたアデルバードを睨み、触れられるかもしれないという拒否反応からイザベルはスカートが捲り上がるのも気にせず右足を上げた。
「触らないで!!」
ゲシッ!!
「ぐああ!?」
近距離で放たれたイザベルの回し蹴りがアデルバードの股間へ直撃する。
目玉が零れ落ちんばかりに目を見開いた彼はその場に崩れ落ちた。
「あら、防衛本能で体が勝手に動いてしまいましたわ。そうだ、常識が無い恋人と一線を超えて問題となる前に、ここを潰して差し上げましょうか?」
「「ひっ」」
嘲笑を浮かべて淡々と言うイザベルに震えあがり、男子生徒達とオリヴァーは思わず股間を手で押さえた。
「これで、殿下に暴行を働いたとして、わたくしは婚約破棄、処罰を受けますわね。そうそう、先日面白い噂を知りました。婚約者に贈り物の一つも渡さない最低野郎が、恋人が強請るままにアクセサリーを贈ったと。わたくしをないがしろにしてくださった記録は全て、代筆だと分かるお手紙と一緒に確保してあります。勿論、彼方で気絶されている恋人様が貴方以外の男子と物陰で致していた行為も記録済みです。全てお父様に送りましたから、今頃国王陛下と王妃様もご覧になっていますね」
脂汗を流して悶絶するアデルバードを見下ろし、目を細めたイザベルは至極楽しそうにくすくす声を出して笑う。
「ぐうぅ、イザベル、私は、違う」
痛みで震える手を必死で伸ばし、息も絶え絶えの状態で声を出すアデルバードの両目から涙が流れ落ちる。
「違う? 涙を流して言い訳するとは情けないわね。やはり潰してしまいましょう」
汚物を見るような冷たい視線をアデルバードへ向け、イザベルは右足の靴先で彼の股間部をつつく。
「も、もう止めろ! これ以上は殿下が死ぬ!!」
床に倒れて身動きが取れないでいるアデルバードの股間目掛けて、再び足を振り下ろそうとするイザベルを我に返ったオリヴァーが羽交い絞めをして止めた。
「駄王子のイチモツを潰してやるのよ! 離しなさい!」
「王太子を再起不能にしたらご両親も咎を受けるぞ!」
オリヴァーと生徒達の必死の説得によりイザベルが落ち着きを取り戻した頃、股間の痛みで呻いていたアデルバードは意識を失っていた。
「殿下……」
気を失ったアデルバードの股間が濡れているのには気が付かない振りをして、書記の男子生徒は自分のジャケットをそっと哀れな生徒会長へかけた。
打合せの邪魔だと、生徒達が思っていてもアデルバードがミネットの話を聞いている以上、他の者が二人の会話を遮断できない。
口を挟めるのは、副会長であり王太子の婚約者のイザベルだけ。
机に両手をついてイザベルは椅子から立ち上がった。
「あのねミネットさん。わたくしが告げ口をするなんて、くだらないことをすると思っているのですか? 補習担当の先生は誰が来なかったか把握していて当然でしょう? もしもわたくしが動くのでしたら、徹底的に、証拠も残らずに貴女を潰しますわ。貴女の振る舞いは、無知だとしても非常に失礼で不愉快です。そして打合せの邪魔です」
怒りを滲ませた声色に、隣に座る書記の男子生徒はギョッと目を開いて身を縮めた。
「ミネットさん、話は後で担当の先生に同席してもらい聞きます。何度も言いますけど打合せの邪魔です。殿下と一緒に退室しなさい」
退室を命じたイザベルを睨み付けたミネットの顔は、怒りで徐々に真っ赤に染まり勢いよく床を踏み鳴らした。
「邪魔ですって? うるさいわね!! アンタが悪役令嬢の動きをしてくれないから! アデルバード様の攻略が上手くいかないのよ!! ちゃんと役目を果たしなさいよ!!」
叫び声と共に身を翻したミネットは、目にも留まらない速さでイザベルへ掴みかかった。
「ミネット!?」
ダンッ!
「ぐきゃあ!?」
制止の言葉をアデルバードが言い終わる前に、イザベルへ掴みかかったミネットの体は後方へ吹っ飛び壁に激突する。
襲い掛かったミネットの手首を掴んだイザベルが、勢いを利用して壁へ向けて投げ飛ばしたのだ。
静まり返る室内に、白目を剥いて気絶したミネットの呻き声だけが大きく聞こえた。
「殿下……恋人はちゃんと躾をしておいてください」
今まで聞いたことが無い、底冷えするような声と氷のように冷たい眼差しをイザベルから向けられたアデルバードは、ビクリと体を揺らした。
「イザベル、落ち着け」
「……落ち着け? 殿下の婚約者というだけで妙な噂を流され、失礼な方から悪役令嬢と言われたのに? わたくしが好き好んで殿下の婚約者になったとお思いですか? わたくしの意思ではありませんし、貴方と結婚なんて冗談じゃない。すぐにでも解消したいと思っています。ええ今すぐに解消しましょう。其処で伸びているミネットさんと婚約して、二人でお幸せになってくださいませ」
「イザベル」
手を伸ばそうとしたアデルバードを睨み、触れられるかもしれないという拒否反応からイザベルはスカートが捲り上がるのも気にせず右足を上げた。
「触らないで!!」
ゲシッ!!
「ぐああ!?」
近距離で放たれたイザベルの回し蹴りがアデルバードの股間へ直撃する。
目玉が零れ落ちんばかりに目を見開いた彼はその場に崩れ落ちた。
「あら、防衛本能で体が勝手に動いてしまいましたわ。そうだ、常識が無い恋人と一線を超えて問題となる前に、ここを潰して差し上げましょうか?」
「「ひっ」」
嘲笑を浮かべて淡々と言うイザベルに震えあがり、男子生徒達とオリヴァーは思わず股間を手で押さえた。
「これで、殿下に暴行を働いたとして、わたくしは婚約破棄、処罰を受けますわね。そうそう、先日面白い噂を知りました。婚約者に贈り物の一つも渡さない最低野郎が、恋人が強請るままにアクセサリーを贈ったと。わたくしをないがしろにしてくださった記録は全て、代筆だと分かるお手紙と一緒に確保してあります。勿論、彼方で気絶されている恋人様が貴方以外の男子と物陰で致していた行為も記録済みです。全てお父様に送りましたから、今頃国王陛下と王妃様もご覧になっていますね」
脂汗を流して悶絶するアデルバードを見下ろし、目を細めたイザベルは至極楽しそうにくすくす声を出して笑う。
「ぐうぅ、イザベル、私は、違う」
痛みで震える手を必死で伸ばし、息も絶え絶えの状態で声を出すアデルバードの両目から涙が流れ落ちる。
「違う? 涙を流して言い訳するとは情けないわね。やはり潰してしまいましょう」
汚物を見るような冷たい視線をアデルバードへ向け、イザベルは右足の靴先で彼の股間部をつつく。
「も、もう止めろ! これ以上は殿下が死ぬ!!」
床に倒れて身動きが取れないでいるアデルバードの股間目掛けて、再び足を振り下ろそうとするイザベルを我に返ったオリヴァーが羽交い絞めをして止めた。
「駄王子のイチモツを潰してやるのよ! 離しなさい!」
「王太子を再起不能にしたらご両親も咎を受けるぞ!」
オリヴァーと生徒達の必死の説得によりイザベルが落ち着きを取り戻した頃、股間の痛みで呻いていたアデルバードは意識を失っていた。
「殿下……」
気を失ったアデルバードの股間が濡れているのには気が付かない振りをして、書記の男子生徒は自分のジャケットをそっと哀れな生徒会長へかけた。