死神さんは春になく
次に少女が訪れたのは冷たい雨の降る日だった。



“死神さん”と呼んだ少女の声はとても静かなものだった。



――死神さん。どうしてこの少女は桜を見て、その名を呼ぶのだろう。



“そこにいるってわかってるのに、話せないってつらいね。……死神さんあのね。毎日楽しかったよ図書館は、あなたに会える特別な場所だから。

――わたしは識ることができる側の人だから、いつもひとりだった”



少女は淡々と語る。自分の物語を。



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