死神さんは春になく
花が降る。



瞳からハラハラと――。



この感情が何なのか。まだよくわからない、花が散っていくような気持ちではない。だから哀しいともちがう。



少女は約束をくれた。



僕がしてあげられることはなんだろう。掴めない雲のような願いだとしても、探さずにはいられない。



ふと笑みが零れる。それは無意識だった。欠けていたもの、忘れていたもの――それはほんの些細なことで花開く。



「……ありがとう。きっと、この感情はそうなんだろうな」



ここにいる。



僕ができる唯一のこと。それ以上に少女は何も望まないだろう。



またきっと、僕は感情を咲かせることができる。



何度散っても、何度も咲いてみせる。――少女のために。



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