愛して先輩っ! XXX
「はーい」

「俺だ。入っていいか?」



祐樹先輩……。

今、祐樹先輩の顔を見たら泣いてしまうかもしれない。

だけど、祐樹先輩の顔を見ることが出来るのも、これが最後かもしれない。


だって、明日。

私はこの寮を去るのだから。

みんなと会うことなく、静かに寮を去る。

退寮届けを引き出しにしまう。



「どうぞ!」



元気を装って声を出す。

扉は静かに開かれた。



「奈々」



祐樹先輩は机に向かっている私の近くに来て、床に座った。



「学園長はなんて言っていた?」



単刀直入に聞いてくる祐樹先輩。

多分、いつか、聞かれるだろうとは思っていたから答えは準備していた。



「おばあちゃんの話ですよ」

「奈々のおばあさん?」

「はい。寂しがっているから、たまには帰ってきなさい……、と伝言でした」



へらり、と笑う私。

あながち、間違ってはいない。

嘘と本当の間。

祐樹先輩相手に誤魔化すことは難しいことだけど、私は誤魔化し続ける。

じゃないと、本当に離れがたくなってしまうから。
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