愛して先輩っ! XXX
「奈々ちゃんも女の子に育ったねぇ」



……おばあちゃん。

私は生まれてから今日まで、ずっと女の子だったよ。


おばあちゃんのおかげで、甘い雰囲気がどこかへいってしまった。

いや。

それでいいんだけど。


彼らの言葉が本気の言葉だとしても、私は答えなんて出せないと思うから。

こういうシチュエーションは初めてだし。

どうしていいのか分からないし。


それに。

誰かと付き合うってことは、ひとりを選ばなきゃいけないってことでしょ?

彼らの中からひとりを選ぶなんて絶対無理。

みんなのこと、好きだし。


……恋愛対象として見てこなかったけど。

でも。

もし、これから、“恋人”という存在が私に出来たら……。


なんて、妄想してしまう自分がいるんだ。

おばあちゃんと楽しそうに話している彼ら。

今は、“恋人”とかじゃなくて、この時間を大切にしたい。


わがままだとは思う。

彼らの言葉に真剣に向き合わなきゃ、と思うけど。

だけど、ゆっくり時間をかけて、これからの時間も歩んでいきたい。


窓から見える夕日。

そろそろ、みんなは寮に帰る時間なのかな。


……私は、退寮届けを提出してしまったから。

もう帰れないけれど……。
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