愛して先輩っ! XXX
ドンッ!

瑠衣くんが掲示板に握りこぶしを叩きつけた。

静まり返る廊下。

騒いでいた生徒たちはビクッと肩を跳ねさせた。

そのまま、瑠衣くんはゆっくり手を下ろした。


なにを言うのか。

なにを言われるのか。

ここにいる全員が、体をこわばらせた。

だけど、瑠衣くんはなにも言わず。

2年生の階へ続く階段を上っていった。



「ちょ、やばくない?」

「うちらも、教室に戻ろっ」



バタバタと姿を消していく生徒たち。

私を睨んでいた大和撫子風美人さんも、誰だか分からない私を突き飛ばした生徒の姿もなかった。



「奈々。大丈夫……、じゃないよな」



星矢くんが私を引き寄せたかと思ったら。

その腕に抱きしめられた。



「星矢、くん……?」

「ごめん。奈々が傷ついているのを放っておけなくて」



私はその腕の中で目をつむる。

星矢くんの腕に包み込まれるのは何年ぶりだろう。


温かくて。

先ほどまでの出来事を消してくれるようだった。


ビリッ!

紙の破れる音が聞こえた。

星矢くんの腕の中から、音のしたほうを見る。
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