愛して先輩っ! XXX
「そんなに強く握り締めていたら、手が痛くなっちゃうよ」



瑠衣くんが握りしめている手を、ゆっくりと開く。

その手のひらには、やっぱり爪のあとがついていて。

胸がぎゅっと切なくなった。



「瑠衣くんは、ひとりで抱え込んでいたんだね」

「そんなことっ、」

「ほら。また怖い顔しているよ?」



自然に笑みが浮かぶ。

だけど、瑠衣くんの表情はこわばったまま。


私は瑠衣くんから少し離れて膝を抱える。

フェンスに寄りかかって、オレンジ色の空を見上げた。



「私は、“彼女”のフリをしたこと、後悔してないよ」



うん。

後悔していない。

自分の心が、そう言っている。



「もし、“彼女”のフリをしていなかったら、瑠衣くんとこうやって話すことはなかったかもしれないから」



だから、嬉しい。

そう微笑むと、瑠衣くんは苦笑した。
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