愛して先輩っ! XXX
「あんたって、ほんとバカ」



瑠衣くんの目が私の目をとらえる。

さっきまでとは違って、瑠衣くんの瞳に少し光が戻ってきたような気がする。



「バカ、だけど。……僕は嫌いじゃない、かも」



そう言って、頬を赤くする瑠衣くん。

ツンデレなのかな?

多分、瑠衣くんの場合は、素直になる方法を知らないだけだと思う。


それから、瑠衣くんはぽつりぽつり、と話し始めた。



「芸能界に入るとね、本当の自分が消えちゃうような気がするの」

「……」

「自分の“キャラクター”っていうものを壊しちゃいけないんだ。だから、学校でも気を抜くことが出来なくて」



瑠衣くんのキャラクター。

“かわいさ”を売りにしている瑠衣くん。

きっと、感情的になってはいけないと思ったりしているのかな……。



「敷かれたレールの上を歩いている感じがする。“僕”という人間を周りの人たちが作って、それを演じなきゃいけない」

「……」

「“自分らしさ”とかいうけれど、“自分らしさ”ってなんだろうね」



乾いた笑いをする瑠衣くん。

瑠衣くんは、ずっと自分と闘ってきて、ひとりで悩んでいたのかな。
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