愛して先輩っ! XXX
「私は、」



立ち上がる私。

背中をフェンスにつけて、寄りかかった。



「瑠衣くんが、世間の目とか気にするのは仕方ないと思う」



私は、膝を抱えて座っている瑠衣くんに視線を向ける。

瑠衣くんも私を見上げていて。

その目は揺らいでいた。



「だけどね、世の中が作り上げた、勝手なルールにはとらわれて欲しくない」



もちろん、マナーとか必要最低限のことは大事だと思う。

だけど。


『芸能界にいるから、こうしなくちゃいけない』

『自分は、こうあらなくちゃいけない』


なんて、切なすぎる。



「……世の中の人たちが思い描く姿にならないと、僕の価値は下がる」

「下がらないよ」



瑠衣くんの価値は下がらない。

だけど、価値を下げるとしたら。



「自分の価値って、自分で決めるものだと思う」



自分はダメな人間だって思ったら、ダメな人間になってしまうかもしれない。

だけど、『自分は自分なんだ』って認めることが出来れば。

それが“本当の自分の価値”なんだと思う。
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