愛して先輩っ! XXX
「似合わないだろ」



そう言って祐樹先輩が笑う。

私は苦笑した。

似合わないのは事実だったから、なんとも言えなかった。



「悪い奴から、弱い者を助ける。そのためには強くなくちゃいけない」



首をかしげる私に祐樹先輩は言葉を続けた。



「……小学生の頃、友達がいじめられていたんだ」

「そうなんですね」



祐樹先輩の過去。

小学生時代のお話。

……初めて聞く話。



「仲のいい友達がいじめられていたのに、俺は見て見ぬふりをして助けなかった」



祐樹先輩が?

なんだか意外だった。



「次に自分がいじめられるのかと思うと、怖くなった」

「……」

「あのときは、助けてやれなかったから。……今度は誰かを助けてやれるようになりたい」



祐樹先輩は、テーブルの上に置いてあったコーヒーを一口飲んだ。

小学生時代の思い出は、苦いものだったのかな。


そうだとしても。

その過去があるから祐樹先輩の今があるんだよね。



「話してくれてありがとうございました」

「おう」



祐樹先輩の過去を聞けて嬉しかったな、と思っていると。
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