あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
運命の出会い
「翼……」
「悠……一さん」
何度も唇を重ね、互いの名を呼び合う。全身に広がる甘い痺れに我を忘れそうになる。
心も体も彼を求めていた。
そして繰り返される快感の波に、私は時間を忘れるほど抱き合い、彼との思い出を体に刻んだ。
数時間前までの私は、一瞬で恋に落ちるなんて映画やドラマの中だけだと思っていた。
でもそうじゃなかった。
知っているのは名前だけ……でも私は後悔などしていない。
全ては私が望んだことなのだから……。

***

「お願いします」
ホテルのフロントにルームキーを預けた。
「いってらっしゃいませ」
軽く会釈し、私はホテルを出た。
人が多く行き交うこの街の夜も今日で最後だ。
私は高く聳え立つたくさんのビルを見上げ、大きなため息を吐いた。
私、奥寺翼(おくでらつばさ)は明日の朝、祖父母の住む美崎島(みさきじま)へ旅立つ。
理由はこの大都会での暮らしに疲れたというのが一番かな。
私はジュエリーデザイナーに憧れ、高校を卒業すると、東京のデザイン系の専門学校に進学し、憧れのジュエリーブランド「shinobu akasaka」に就職することができた。
内定をもらった時は本当に嬉しかった。
ここで技術を身につけ、いつかは自分ブランドを持ちたい。
そんな大きな夢を抱いていた。
だが、現実はそう甘くなかった。
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