あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
う、うん」
やはり、祖母はすごい。
「ん? 翼がどうかしたの?」
そういうのは母だ。
「なんでもないよ」
そうこたえるものの、スマホが気になって仕方がないのだ。
すると祖母が立ち上がった。
「よっこいしょ。そうそう、翼に一つ頼みたいことがあったんだ。ちょっと台所まで来てくれるかい?」
「う、うん」
祖母に言われ、台所にいく。
「ばあちゃん、頼み事って」
「これを朝倉くんに持ってってくれないかい?」
それはさっき言っていた厚揚げに煮物だった。
「え? でも……」
祖母は戸惑う私の手の上に煮物の入った容器を乗せた。
「いいかい? これは私が翼に頼むの。これを朝倉くんに持ってって頂戴」
柊一の父が彼だと知ったらどう思うだろう。
だけど真実を口にする勇気がない。
「でも……来なくていいって」
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