あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「あのね……帰ってきたら大事な話があるの」
彼が体を離した。
「話? 今じゃダメなの?」
ダメじゃないけど……明日東京に帰る彼にこれ以上負担をかけたくないという思いと、本当のことを言って彼が私から離れていくのでは? と思ったら怖くて言えないのだ。
私はコクンと頷いた。
「わかった。じゃあ俺が帰ってきたら教えてくれ」
「はい」
「だけどな〜」
彼が急にため息を吐いた。だがすぐに私を再び抱きしめた。
「本当に俺の帰り、待っててくれる? また俺の前から逃げ出したりしない?」
やっぱり、怒ってるよね。
「あの時はごめんなさい。でも今度は絶対に逃げたりしない」
「本当に?」
「本当に」
「じゃあ……俺を信じさせてよ」
「信じさせるって……」
「キスして」
今にもキスしそうな距離にドキドキしてしまう。
「そ、そんな私からなんて」
するとまたも彼がため息を吐いた。
「やっぱり、君は俺のことをその程度にしか——」
「そんなことない! そんなこと……」
「じゃあ、俺を信じさせて」
彼の口角が上がる。
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