あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
絶対意地悪だ。
でも約束を破った後ろめたさは二年たった今も正直心の隅に残っていた。
それにしても自分からキスなんてしたことないんだけどな……ええい! 勇気を出せ私!
人生初の自分からキスを決行!
——チュッ
本当に子供騙しのキスだったと思う。
こんなの全然
「だ〜め。今のはキスじゃない。唇が当たっただけ」
「で、でも——」
彼が私の腕を掴んだ。
そしてゆっくりと顔を傾けながら私の顎に手をかけるとクイっと上に向けた。
彼の長い睫毛と潤んだ瞳と目が合うい、魔法にでもかかったかのように動けなくなる。
「俺がほしいキスはこんなんじゃない」
甘くかすれた声。キスまでの距離は数ミリで、彼の甘い息を唇に感じる。
私の唇に柔らかい感触を感じたのは、本当にすぐだった。
唇が重なっただけで、体が熱くなる。
ドキドキして、でもそれは私の身も心も溶かすように幸福感に包まれる。
そして彼の舌先が中に入り、私の舌に絡みつく。
鼻で息をしたいのにうまくできなくて、唇から荒い息が漏れる。
どうしようもない愛おしさが私を襲い、さらに体を熱くさせる。
ゆっくりと唇が離れると、名残惜しそうに優しいキスを繰り返す。
「ごめん。名残惜しくて」
「うん」
私も同じ気持ちだった。
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