あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています

一瞬にして緊張に包まれる。
言われるがまま車の後部座席に座ると、加賀美さんも続くように私の隣に座った。
最初に口を開いたのは加賀美さんだった。
「いきなり本題に入らせていただきます。改めまして私、朝倉ホールディングスの顧問弁護士をしております加賀美と申します……恐らく察しがついたかもしれませんが……要件と言いますのは悠一さんのことです」
——やっぱり
「彼が突然結婚を白紙に戻したいと言い出しまして……ご存知ですよね」
「……はい」
「あなたに会う前は聞き分けのいい方だったんですが、今回に限っては頑として気持ちを曲げないと申しますか……」
要は悠一さんは白紙にしようと頑張ってるけどうまくいっていないとうことだろう。
「西園寺様の方も最初は白紙にしたい言われておりましたが、説得して撤回してくれたのですが……」
加賀美さんの話し方で何が言いたいのか察しがついてしまった。
だけど自分の口からは言いたくない。
それが伝わったのだろう。
加賀美さんはため息をつくと、渋々といった表情で話を続ける。
「悠一さんと別れてくださいませんか？」