あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
そしてバッグから封筒を取り出した。
「もちろんタダとは言いません。これだけあれば引っ越し費用の足しにもなりますし、それでも足りないようでしたら私に連絡を——」
「結構です」
鏡さんのヒュ嬢が一瞬で曇った。
「そんな綺麗事……いってられますか?」
加賀美さんが鼻で笑った。
「どういうことですか?」
「この島にどんな仕事があるんですか? 大方貯金切り崩して何とかやりくりしてるんでしょ? この際だからこの島をでてもっと都会で仕事を見つけてはどうですか?」
一体なんなの?
小馬鹿にしたような言い方に苛立ちを感じた。
「私はこの島を出るつもりはないです」
「本当にいいですか? 実は悠一さんと由理恵様はあのチャペルで結婚式を挙げるんです。だからあなたがどんなに頑張ったってもう、彼と一緒になれることはありえないんです」
彼と再会した時、こういうことになるのが嫌で私は彼を避けた。
だけど私は彼の言葉を信じた。
やっと会えた。それは奇跡ではなく、必然だって思った。
でも結局、何も変わらなかった。
もう二度と離れたくないと思ったのは私のわがままだったのだろうか。
でもここでごねたりしたら?
知られたくないことまで知られてしまう。
加賀美さんの話を聞く限り、柊一の存在は知られてない。
このまま、いろいろ調べられて柊一の存在をしったら?
もし後継にって子供を奪われる?
そんな嫌な予感が頭をよぎった。
どうしたらいいの?
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