あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
激しい鼓動が私を襲った。
「奥寺さんのお子さんが誰の子かはあえて調べませんし、あなたが身をひいてくれるというのでしたらlこのことを誰かに言うつもりはないです。全て私の胸の奥にしまっておきます、大方、君以外父親が誰か知らないんでしょ」
私は唇を噛みしめながら強く頷いた。
「だったら尚更。ま〜こんなことが公になればうまくいくものもいかなくなってしまいますしね。僕もこれ以上仕事を増やしたくない」
彼を本当に信じてもいいのだろうか。
きっとこの人、私がどう答えるか察しがついていたのだろう。
だから強気だったんだ。
私が絶対に断れないとわかっていたんだ。
「彼と息子は一切関係ありません」
「……そういうことにしておきます。だったらこの封筒は受け取ったほうがいいのでは?」
もらって損はない。そう言っているようだった。
だけど、こうなった以上私にも意地ある。
それにお金を受け取れば向こうの思う壺だ。
そうはなりたくなかった。
「いただけません」
加賀美さんはやれやれといった表情を向けると渋々封筒を鞄の中にしまった。
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