あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「ただいま」
「今日は随分遅いわね」
祖母が柊一とおもちゃで遊んでいた。
「ごめん。おばさま達に呼び止められて話が長くなって……」
呼び止められたのは間違いないが、おじさんだ。
すると柊一が私のそばまできて両手を上にあげた。
「抱っこ? いいよ〜」
私は柊一を抱っこした。
柊一は私に抱きつくように手を私の首に回した。
「柊ちゃん眠たい?」
「ねんね、ねんね」
「ばあちゃん、私この子寝かせてくるね」
自室に戻ると、柊一をお昼寝用の布団に寝かせ、添い寝した。
背中を、おなじリズムでポンポンと優しく叩く。
すると柊一は五分もしないうちに眠ってしまった。
私は手を止めると大きく息を吐いた。
結局元の生活に戻るだけよ。
平凡だけど、穏やかな毎日に戻るだけ。
それだけのことなのに、何でこんなに胸が苦しいんだろう。
彼との再会は全て夢だったと思えばいいのに。
本来、再会なんてありえなかったんだもん。
彼は彼の住む世界へ。
私も私の住む世界へ。
なんて頭ではわかっているのに、実際は苦しくて苦しくて……。
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