あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
柊一が体調を崩してから三日がたった。
全く症状が良くならない事への不安が募る。
「なんで熱が下がらないの?」
診療所は早くて明日。
このまま熱が下がらずこの子がもっと悪化したらどうしよう。
だが、柊一はだんだん笑顔が見れるようになった。
夕方には食欲もほんの少しだけ良くなって、もしからしたら熱が下がり出しているのかもしれない。
そんな気持ちでいたが、それはほんの束の間の出来事だった。
夜になると熱は四十度まで上がっていた。
解熱剤もなく、どうすることもできない自分に苛立った。
少し前まで機嫌の良かった柊一も、今はとても苦しそうだった。
すると祖父が部屋に入ってきた。
「いま、船を出してもらうように吉田さんに頼んできたからすぐに準備しなさい」
「ありがとう」
「翼だけじゃ不安だろからばあさんもついていけ」
「そうだね。翼は必要なものを用意しなさい。シュウちゃんの寝巻きがすこし湿ってるから着替えさせるよ」
祖父はいつでも出られるようにと車で待つと言って部屋をでた。
保険証とお財布と着替えと……。
あたふたしながら支度を済ませ、ぐったりしている柊一を抱っこして祖父の待つ車に乗り込んだ。
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