あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
家から港までは車で五分程度だ。
本土に行けばきっと良くなる。
希望の光が見えたと思ったのだが……。
港に着き、車から降りたその時だった。
祖父の携帯が鳴った。
「んん?」
祖父は携帯をみて眉を顰めた。
「じいちゃんどうしたの?」
「いや、吉田さんの家から電話だ」
そして電話に出た祖父は「なんだって?」と驚いた声を発したのだ。
不安になって私と祖母が顔を見合わせる。
「それなら仕方ないな……わかった。……いやいいんだ。お大事に」
祖父は電話を切るとガクッと肩を落とした。
「じいちゃん。どうしたの?」
「それが……吉田さん、玄関先でぎっくり腰やっちゃって、動けなくなったんだ」
「え?」
「あら〜」
私と祖母の声が重なった。
「船を出せそうな人もおらんし……どうしたもんかな〜」
どうしよう。
抱っこしている柊一はぐったりしている。
でも外であれこれ考えているうちにこの子の症状がさらに悪化するのは……。
「もしかすると先生が帰ってきてるかもしれないから一度電話してみる」
そういって祖父は診療所に電話をしたが。
祖父は首を横に振った。
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