あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「出ない」
こうなったら一旦家に帰って、明日の診療までみんなで看病するしかない。
「きっと柊ちゃんならなんとか頑張ってくれる。だから帰ろう」
そう言って車に乗り込もうとした時だった。
「藤村さん?」
聞き覚えのある声に、緊張が走る。
悠一さんだ。
私は柊一を隠すように後ろを向いた。
「朝倉くんじゃないか。仕事帰りか?」
「本社に用事があって……それよりこんな時間にどうかされたんですか?」
——どうしよう。じいちゃんが柊一のことを……
祖父母は私と悠一さんのことを何も知らない。
もちろん柊一の父親が彼だということも。
そして彼も柊一の存在を知らない。
まさかこんなところでバレるなんて……。
でも病気の子を抱えて嘘がどうこう言っている場合でもない。
「それが、ひ孫が2日前から熱をだしてな……一向に良くならなくて本土の大きな病院に行くところだったんだが、肝心の船がだせなくなってな〜」
あ〜ひ孫って言っちゃったよ。
「ひ孫……ですか?」
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