あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
背中を向けていても彼の驚きを感じる。
「あれ? 朝倉くんに話してなかったか?」
「は、はい」
——やっぱり驚いてる。
「じいちゃん帰ろう」
「あ、ああ。そうだな。朝倉くん悪いね」
私は顔を見せないように車に乗り込もうと後部座席のドアを開けた。
「待ってください。船に乗って大きな病院で診てもらわなきゃいけないほど症状が悪いんですよね」
まさか引き止められるとは思いもしなかった。
彼は何をしようとしているの?
すると祖母が柊一の症状を話した。
「もしかして肺炎か何かじゃないですか? 僕は医者じゃないから詳しくないですが……昔自分も小さい時に肺炎を患ったんで」
「肺炎? だったら医者に診せなきゃ」
祖父が慌てる。
だけど病院で診てもらう手段がないのにどうすればいいの?
すると彼が「ちょっと待っててください」といってどこかに電話をかけた。
私はずっと彼に背中を向けたまま黙っていた。
「今ヘリを調達しました。なので場所を移動します。藤村さんは僕の車についてきてください」
「あ、ああ」
思いがけない展開に私も祖父母も驚いていたが、彼が急いで社用車に乗り込んだので、私たちも彼の後ろについて行くしかなかった。
だがこんな形で秘密がバレるかもしれないと思うと私は全く落ち着かなかった。
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