あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「翼、ヘリコプターが到着したよ」
「はい」
私は柊一を抱っこし、祖母が荷物を持ってくれた。
ヘリコプターの音で柊一の機嫌が悪くなりぐずり出した。
すると悠一さんが近づいてきた。
「君が先に乗って」
「え?」
「この子を抱っこしながらじゃ乗れないよ」
確かにそうだけど……。
「早く乗って!」
強い口調で指示され、私は祖母に柊一を預けると先にヘリコプターに乗った。
悠一さんは祖母から柊一を渡された。
そして悠一さんの手から柊一を受け取る。
すると次に悠一さんが乗り込んだ。
——え? どうして彼が乗るの?
緊張感と不安で押しつぶされそうになる。
それが彼に伝わったのだろう。
「このヘリは朝倉ホールディングスの本社屋上に着陸する。そのあと病院へ向かえるように手配してあるから安心してくれ」
彼の口調は怒ってはいないものの淡々としたものだった。
きっと私に子供がいたことをよく思っていないのだろう。
だったらとことん嫌われた方が、彼の将来のためにもいいのかもしれない。
「ありがとうございます」
悠一さんは何も返事をしてくれなかった。
そしてヘリコプターは私たちを乗せ、東京へと向かった。
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