あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
ホテルの一室。それは私の泊まるホテルとは比べものにならない程豪華で、2人が泊まるにはあまりにも広すぎる部屋だった。
部屋に入った途端、我慢していた思いが一気に溢れ出すように、私たちは互いに唇を求めあった。
舌を絡ませ、息継ぎの仕方を忘れてしまうほどで、こんな情熱的なキスは初めてだった。
今までの私は、出会って、互いを知るうちに恋に落ち、どちらかが告白をして……そんなプロセスを踏んだ恋愛だったが、今日の私はそんなプロセスを一切無視し、湧き上がる感情をぶつけていた。
外国の映画で、初対面の男女が引かれ合い、互いを求め合うように濃厚なキスをし、体を求め合うのをみて、こんなのは映画の中だけであって現実にはないことだと思い込んでいた。
でも今の私たちはまさに映画の中の男女と同じだった。
私たちは言葉を交わす代わりに何度も唇を重ねた。
「翼……」
「悠一……さん」
互いの名を呼び合いながら、私たちはベッドルームへ向かう。
1秒たりとも時間を無駄にしたくなくて、キスをしながら身に纏う全てを脱ぎ捨てる。
そして上半身が下着だけになるとゆっくりとベッドに押し倒される。
こんなに激しく誰かを求めたことはあるだろうか。
そしてこんなにも誰かを愛おしく思ったことはあっただろうか。
人を好きになるのに時間はいらないってことを肌で感じた。
「翼……好きだ。こんなに誰かを欲しいと思ったのは君が初めてだ」
ベッドの上での甘いささやきに身悶えする程、嬉しくなる。
「私も……同じ」
彼の触れられた部分が敏感に反応し、部屋には甘く痺れるような声が響き渡る。
抵抗は、快感の裏返しだと悠一さんは執拗に攻め、私を高みへと誘う。
こんなに夢中になるのは彼との甘い時間が最初で最後だからなのか、それとも無条件で彼にひかれたからなのか……。
声が枯れるほどに互いに激しく求めあった私たち。
だが時は止まってくれなかった。