あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
彰は話を続けた。
「カクテルには花言葉のようにひとつひとつ意味があるんだ」
「へ〜それは知らなかった」
「普通はそうだろうな。俺も仕事上覚えただけだ」
「じゃあ、このカクテルにも意味があるわけだな」
「ああ」
彰の勿体ぶった言い方に気持ちが焦る。
「それで、その意味ってなんなんだ?」
「完全なる愛と叶わぬ恋」
「それって……」
俺はグラスをじーっと見つめ、ため息を吐いた。
「意味としては両極だよな。でも仕事に裏切られ、恋人とも別れ……彼女を見たときブルームーンが合うと思ったんだ。もちろん完全なる愛を見つけて欲しいという意味でね」
「なるほどね」
じゃあ俺はどっちなんだ?
この状況だと限りなく叶わぬ恋だろ。
俺はグラスのカクテルを一気に飲み干すとため息をついた。
「おいおい、やけになるなって。俺は、お前と彼女があのタイミングで出会ったのは、偶然じゃないと思ったよ」
「俺だって、運命だと思ったよ」
俺の名は朝倉悠一。30歳。
リゾート開発やホテル事業を展開している朝倉ホールディングスでリゾート開発部門を担当しており、将来的にはこの会社のトップに立つ。
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