あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「じいちゃん」
「お父さん? 簡単に言うけど——」
「お前たちはさっきから父親が誰かとか結婚がとか……生まれてくる子供の気持ちを考えてない」
「だけどね、お父——」
「生まれてくる子供に罪などない。第一翼は、産むことを望んでる。家族だったらみんなでサポートすることが大事なんじゃないのか!」
祖父の言葉に私も訴えた。
「私はどうしてもこの子を産みたい。この子をなかったことになんかできない。どうか産むことを許してください」
私は頭が畳につくほど下げた。
「私も生きている間にひ孫がみたいし、夢でもあったし……ここは私とおじいさんにまかせてはくれんか?」
祖母も一緒に頭を下げてくれた。
母は、
「べ、別に意地悪で言ってるわけじゃないのよ。翼のためを思って——」
「この子に土下座させている時点で翼のためじゃないだろ。そもそもお前たちだって似たようなもんだっただろ?」
母はこの島で育ち、大学の時に上京。そこで父と出会い、結婚したのだが、いわゆるデキ婚というやつだった。
父がこの島に来た時、結婚の許しと妊娠の報告が一緒だった。
許すも許さないも子供がお腹の中にいる以上、祖父母は賛成はおろか反対すらできない状況だったという。
そして東京で兄を産み、3年後に突然脱サラして父の故郷の岐阜でカフェを始めた。
この時も、事後報告。
こんなんだから祖父母もウチの両親には強気で言えるのだ。
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