あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
当初は蛍の森は予定になかった。というよりあの森で蛍が見れることすら知らなかったらしい。
チャペルの建設話が出てきた段階で、一度アニメを見てみようということになった。
その映画の中に蛍の森で主人公たちが出会うというシーンがあるというのだ。
映画を見た後にたまたまうちの祖父とあの森を散策してたら蛍が飛んでいて、あの森に蛍が集まることを知ったというのだ。
「偶然だとはおもうけど、あの森がアニメのワンシーンにそっくりでね。2人が出会う重要なシーンでもあって、集客アイテムとしては申し分ないと思ったんだ。だからあの森は——」
アニメのせいにしようとは思ってないし、偶然が重なったことだということはわかってるけど、
あの森を集客アイテムにして欲しくない。
正直家族以外の人に知られたこともショックだったのだから。
「ダメよ。そんな……。あの森に多くの人が来たら蛍がいなくなる。それにあの場所は……」
「わかってる。幸にもこのことを知っているのは俺だけだ」
「だったらいいじゃない。私は誰にもあの場所を知られたくない」
すると悠一さんが私との距離を縮めるように近づいてきた。
「でもあの土地はもう朝倉ホールディングスのものだ」
「だから、何でもするからって言ってるでしょ」
その言葉に彼の口角が上がった。
「そうだったな。その条件として俺の恋人になってくれるのなら、あの森は手を付けない」
昨日からずっと思っていたけどなんで交換条件が恋人なの?
まさか、まだ私のことを好きだから?
だがそう思ったのは束の間で、彼の口から出た言葉は意外なものだった。
「来年、結婚する予定なんだ」
「……え?」
結婚?
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