あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「せっかくですが、婚約者を騙すような真似はできません」
一度は断った。
だが、彼からでた言葉は驚くべき言葉だった。
「婚約者公認だ」
「公認?」
「向こうも俺と結婚するまでは恋人と過ごすと言っていた」
たとえそうだとしてもはいそうですかとひきうけられない。
それに躊躇する理由は他にもあった。
柊一の存在だ。
ただ、私と付き合うことで蛍の森が守られるというのも事実だ。
「翼?」
「それって本当に期限つき?」
「……ああ」
「じゃあ私があなたの恋人になったら……蛍の森はそのままでいいの?」
「ああ、あの森は守る」
もちろんあの森は守ってほしい。
だが私の心の大半は違っていた。
二年ぶりに再会した悠一さんともう少しだけ一緒にいたいという気持ちが湧き上がっていたのだ。
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