あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
私はカクテルの色を楽しみながら一口飲んだ。
レモンの酸味がフルーティーで飲みやすいお酒だった。
「お味は?」
「飲みやすくておいしいです。でも度数は高いんでしょ? 調子に乗って飲んじゃいけないって感じがする」
実は過去に飲みやすいという理由でたくさん飲んで酔った経験がある。
「確かにね。でもカクテルなんてみんなそんなもんだろ。ところでこのカクテルの意味を知りたい?」
カクテルにはカクテル言葉があるらしい。花言葉のカクテル版のようなものだ。
そういうのがあるというのは知ってたけど、今までは気にもしていなかった。
それどころか彰さんが急にカクテル言葉のことを口にしたことに驚いた。
でもこんな話題を出すというのは意外性があるからなのだろう。
「教えて」
「ブルームーンというお酒には2つの相反する意味があるんだよ」
あきらさんがピースサインを出した。
「相反する?」
「そう、完全なる愛と叶わぬ恋」
「え? なにそれ……」
全く真逆の意味をもつ言葉に驚いた。
「どっちに転ぶかはあなた次第? っていうのかな〜」
彰さんは得意げなえいみを浮かべた。でも私はなぜこのお酒を選んだのか分からなかった。
「なんで? このお酒にしたの?」
「俺的には、次の翼の恋が完全なる愛っていうの? 失恋しない恋を見つけてくれるといいなという願いを込めて作ったんだ」
恋に敗れた後はしばらく恋愛なんておやすみしたいし、美崎島は高齢化が進んでて恋愛する以前の問題だ。でも彰さんの優しさに胸がほわっとする。
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